FACULTY OF POLITICAL SCIENCE AND ECONOMICS
政経学部NEWS

新任教員の紹介:佐藤 伸一郎 教授

2025.05.08(木)
NEWS  
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今年赴任されました先生を紹介します。
佐藤 伸一郎 教授
担当科目
・アカデミックスキル
・武道論
・武道演習I
・スポーツの歴史と社会
・生涯スポーツ基礎演習

Q1:先生はどのような大学生活を送っていましたか。
7:00 朝トレ
9:00―12:00 授業
10:00 遅い朝食(朝トレがキツすぎてすぐに食べられないから)
12:00 昼食
13:00―16:30 授業
15:00 おやつ(練習前のエネルギーチャージ)
17:00―19:30 練習
22:00 遅い夕食(練習がキツすぎてすぐに食べられないから)
この繰り返しです。日曜日は練習が休みですが、体の回復のため基本的には食事して寝ていました。食べてばかりだったのですが、痩せていく一方でした。あとから分かったのですが、練習のしすぎだったようですね。
このように学生時代は「柔道」中心に生活が回っていました。徹底して鍛える時期に鍛えることができたことはとても良かったと思いますし、学生時代でなければ得られなかったものがちゃんと自分に残っていて、それが今も役に立っています。 
   
Q2:研究者を志すようになった、きっかけを教えて下さい。
ものを教える人になりたいと思っていたのは小学生の頃から。同時にそれとは別に何かで日本一になりたいとも漫然と思っていました。大学時代、授業は1度も休まずに卒業単位は3年生で既に揃っていましたが、興味があることは「柔道で強くなりたい」ということでした。4年生で学生チャンピオンにはなりましたが、オリンピックや世界選手権に出場するためには日本一にならなくてはなりません。そこには全く手が届いていなかったので、競技者生活を継続させるために勉強をし、大学院進学をしました。母校の練習環境が日本で1番良いと思っていたからですね。大学院の2年間でも満足できず、さらに大学に残れるように期限付きでしたが助手で5年間競技生活を続けました。研究者を目指すきっかけは自分の選手生活において(柔道競技の)競技力を向上させるにはどうしたらいいのかと知りたかったからですね。全部自分のためです。高校の指導者が論理的に説明してくださる先生で、ウエイトトレーニングとサーキットトレーニングを複合して行い、かなり体力が向上したように思います。そういう経験があり科学的にトレーニングや練習をしなくては絶対に強くならないと思っていたのと、大学の指導者は手取り足取り教えてくれません。自分でやる以外にはなかったので、自分で自分のコーチングをしようと思い、そのための勉強を始めました。自分の体作りやコンディショニング、トレーニング処方、柔道の技術の習得方法など実際に自分の体で実験して、役に立ったものと役に立たなかったものを選り分けていきました。それに応じて自分のパフォーマンスが向上していくのは楽しくてしょうがなかったですね。ということがきっかけで、柔道選手に対するコーチングの研究をするようになりました。
 
Q3:拓殖大学の印象はどうでしょうか。
拓殖大学には柔道部の監督として2000年4月に着任しました。その時は5年勤めた北海道の某大学の専任教員を辞めて東京に出てきたという変わり者です。普通はそんなことはしない(笑)それからずっと監督を務めていますから25年目となります。長いですねえ。
拓殖大学の印象は「押忍!」ばかりいう人たちの集まりですかね。柔道部OBのみなさんには可愛がっていただきました。「お前は他所者なのだから、率先して拓大のなかに溶け込む必要がある。まずは歌を覚えよ」ということで校歌はもとより、興亜の雄図(キットカチマスカタセマス)、拓大数え歌、先輩送別歌などなどテープに合わせて歌い覚えたものです。私の母校は筑波大学ですがそういう熱狂的な母校愛は無い。これはとても勉強になりました。 
   
Q4:現在、関心を持たれている研究テーマについて教えて下さい。
拓殖大学の教員になったのは2017年ですが、2018年から3年間、順天堂大学の大学院博士後期課程に所属して2021年に博士号を取得しました。博士論文のテーマは「視覚障がい者柔道競技の試合局面にみられる戦術行動の有効性」です。簡単に説明すると、視覚障がい者柔道とはパラ柔道と言い換えることもできますが、パラ柔道競技でどのような試合をすれば勝つことができるかを明らかにしたものです。この研究がきっかけで、2024年パリのパラリンピック柔道競技の日本代表選手団の団長と強化責任者という役割が与えられ、32年ぶりに金メダル2個、銀メダル1個、銅メダル1個獲得という成績を出すことができました。
 
Q5:先生の授業を受講する学生に伝えたいことは何でしょうか。
そうですね。私の授業は教養科目が多いので、それを踏まえてひとつ。
自分を信じることは大切なことだけれども、人間は見たいように見て聴きたいように聴くと言われます。先入観で情報を見たり聞いたりする傾向が大きいのです。先入観ほどタチの悪いものはありません。なぜなら少しも悪気がないからです。なぜ悪気がないか、それは自分が正しいと思い込んでいるからです。他方、善悪で物事を判断する時には物事の一面しか見ていないことが多いです。善悪は簡単にひっくり返ります。立場によって、国によって、社会体制によって、時代によって。だから、善悪で物事を判断することにあまり意味はありません。このような、先入観を持つことをできるだけ避け、善悪を判断基準にしないようにするには「教養」が必要です。一芸に秀でている人たちは素晴らしいですが、教養がなければ秀でている一芸を社会のためにならない使い方をしてしまったりします。SDG’sや共生社会では自分のためよりも他人のため、社会のために行動ができることが必要です。「利他」という考え方ですが、そのためには教養がなくてはならないと思います。自分の好きなこと、専門ばかりではなく、他人を理解しないことには自分のこともわかってもらえないということになりますよね。「教養」を磨いていきましょう。そのために本を沢山読みましょう。