政経学部NEWS
卒業生インタビュー(神奈川県警)
2023.08.04(金)
ゼミ
女性や弱者の力になれる警察官になりたい
島田智紘さん 神奈川県警 勤務2022年3月政経学部経済学科卒業
インタビュアー:荒川菜々さん(法律政治学科2年)
2023年初夏、文京キャンパスにて取材、写真撮影
島田智紘さん
警察官を目指した理由
荒川:本日はお忙しいところ、インタビューのため、茗荷谷までお越しくださり、ありがとうございます。さて早速ですが、なぜ警察官を志望するようになったのですか。島田:もともとは、大学入学後もそれ以前も警察官になろうとは思っていませんでした。ただ、大学三年生で進路を決める時、「自分は何になりたいんだろう」と考えるようになって、これまでの経験を振り返り、「自分のしたことで誰かに喜んでもらえること」や「誰かのために何かをすること」が好きだなと思ったのです。そこから、人の役に立つ仕事がしたいなと考えて警察官を志望するようになりました。警察官の他にも、人の役に立つ仕事や喜んでもらえる仕事は多くあると思いますが、警察官は県民の方々に、より親身になることが出来ると考えました。
荒川:警察官の仕事には危険を伴うことも多くあると思うのですが、志望するうえで不安なことはなかったのでしょうか。
島田:不安はかなりありました。現実はドラマと違って、警察官が事件や事故に巻き込まれて怪我を負ったり、殉職してしまうニュースをよく耳にするからです。また、親にも女性であることの危険性を心配されて、なかなか賛成してもらえませんでした。最終的には、私の熱意を両親にしっかり伝えて、理解してもらいました。現在、実際に警察官になって警察官がどういう職業なのかを知っていくうちに、警察官になる前となった後では、不安なことが変わってきたのです。警察官になる前は自分の身に降りかかる危険に対して不安がありましたが、なった後では自分が誤った判断に基づいて対応をしてしまったら取り返しがつかないことになる、といった不安がありました。
荒川:自分の身の危険だけでなく、自分が誤った行動をしてしまった時に周囲におよぶ危険にも不安を感じるということですね。
島田:そうです。実際に仕事をしていてそう思ったことがありますね。
警察官としての現在の仕事
荒川:続いて、現在の仕事の内容について教えていただけますか。島田:はい。最初は、警察官になった直後に、警察学校へ入校します。多分これはどこの県警も同じだと思いますが、大卒の場合は半年間学校に入って、あらゆる知識を学んで警察学校を卒業します。そのあと実習生として三か月間、実際の現場で仕事をします。私は、実習の最初の二か月間、地域課に配属されて交番の前に立って見張りをしたり、パトカーに乗って巡回をしていました。実習最後の一か月は、警察署の中にある一部署に配属されて、実習生としてその部署が携わる現場へ先輩署員と一緒に赴き、実践的な仕事を学びます。警察署での実習を終えると、現場で経験したことをさらに深く学ぶために、警察学校の補修科へ二か月間入校します。補修科を終えた後は、また三か月間の実習を行っていきます。私は今、この三か月間の実習を”実習生”として行っているところです。その後は実習生から、一人前の警察官となります。そして実習生の期間が終わってからは、また交番での勤務になります。
荒川:警察官になった初めの一年間は実習をメインに仕事をしていくのですね。実際に警察官として仕事をしてみて、今のところ苦労を感じたことは何ですか。
島田:警察官にはすごく体力が必要で、大変なイメージがあると思います。ただ、体力面に関しては、もともと剣道を部活でやっていたこともあって、人並みには体力があると自信を持っていて心配もしていなかったし、実際に苦労をあまりしませんでした。しかし、勉強が苦手だったので・・・(笑)。知識を覚えてなければならない勉強面で私は苦労していると感じました。
荒川:具体的にはどんな知識を覚えるのが大変でしたか。
島田:警察官は、一般では学ばない専門的な法律の知識が多くあるので、その知識を頭に入れていくのが難しいと感じました。
インタビューの様子
拓大に入学したきっかけ
荒川:ところで、なぜ拓殖大学政経学部へ入学されたのですか。島田:もともと高校で剣道をしていて、高校の剣道部の顧問の先生と、拓殖大学の剣道部の監督の先生同士が知り合いであったことをきっかけに入学を決めました。つまり、警察官になるために拓殖大学へ入学したわけではないのです。
荒川:島田さんの大学生活の後半、新型コロナウイルスが流行してしまっていたと思うのですが、やはり部活動の剣道にも支障があったりしたのでしょうか。
島田:はい。当時、剣道部には30人くらい部員がいたのですが、全員で集まって練習が出来ないことになってしまって、半年間くらいはまともに練習もできませんでした。そもそも、大学にも行けず、家にいても不自由な状況だったので辛かったです。でも、三年生になった夏前あたりから、時間を分けた少人数での練習が解禁されました。また、その年の夏から就職活動やインターン、企業説明会に参加しました。
試験に向けた勉強方法とは
荒川:警察採用試験に向けての勉強をするようになった時期も、三年生の夏頃からですか。島田:そうです。多分、勉強を始めるのは遅い方だと思うんですけど(笑)。大学で公務員試験対策のコースのようなものに申し込みして勉強し始めましたね。コロナ禍で対面授業ではありませんでしたが、動画で講習を受けていました。あとは、数的処理という試験科目がすごく苦手だったので、理数系の仕事をしている知り合いに個別指導をお願いして勉強したり、市販の問題集や過去問を買って勉強しました。詰め込むような勉強方法になってしまったのですけど(笑)。
荒川:問題集や過去問は何周くらいなされたのですか。
島田:私は、同じテキストを2周くらいしかできなかったのですけど(笑)。でも、得意分野の問題はあまり力を入れすぎずに、苦手分野に力を入れて勉強するように工夫しました。苦手分野だけ別の参考書や過去問の問題も解いていました。得意分野の問題は何問か解いただけで、問題集を一周もしていないのではないかと思います。
荒川:なるほど。勉強方法はとても参考になります。
在学中に学んでおくべきこと
荒川:続いての質問です。在学中に学んでおくべきことや印象に残っている授業があれば教えてください。島田:私は所属した関ゼミの影響もあって環境関連の授業が印象に残っていますね。日本や世界の環境に関する授業に興味を持ちました。大学で学んでおくべきことは、日本の政治情勢やジェンダー問題、貧困問題などに対する知識は警察官になった今でも活かされていると感じます。警察官として県民の方と対応していると、ちょっとしたことですけど、知識不足で相手の方と会話が成り立たなかったり、対応がうまくできなかったことがありました。大学での学びは何らかの形で必ず役立つのかなと思います。
荒川:日常のちょっとした対応の時に、大学で学んだことが活かされているのですね。ゼミでは具体的にはどのようなことを学んでいたのでしょうか。
島田:関ゼミでは、学生が「こういうことを学んでみたい、こういうことをしてみたい」と思ったことを主体的にさせてくれて、とても充実していました。その一つであるフィールドワークでは、過疎化と高齢化の進む、山口県の大津島へ実際に赴いて、島の美化作業や島の名産品である柑橘類の『酢橙(すだいだい』の植栽、収穫、加工までをして、東京ではボランティアで宣伝しました。これらの活動を通じて、普段関りの少ない高齢者の方と接する経験を得たことで、今の警察官の仕事でも必要になるコミュニケーション力に生かされていると感じました。
今後の目標について話す島田氏
どのような警察官になりたいか
荒川:今後、どのような警察官になりたいでしょうか。島田さんが描く将来像があれば教えてください。島田:実習を終えてから、追々実現していきたいことは女性や弱者の力になっていくことです。女性警察官はまだ少なく、男性警察官がどうしても多い現状では、女性が巻き込まれるストーカーなどの被害も増えてきていて、悩まれている方も多くいるのではないでしょうか。そのようなケースで力になれるのは、やはり同じ女性である私のような警察官しかいないと思うので、女性や弱者の一番力になれる存在になりたいです。
拓大生へのメッセージ
荒川:最後に、警察官を目指す拓大生に向けてお願いします。島田:警察官を志望してくださることは、とてもうれしいですし、すごくありがたい存在であると思っています。洞察力や好奇心を持つことなど、大学ではいろいろなことに目を向けられると将来役立つのではないでしょうか。かくいう私も、そのような力をもっているかと自問すると不安なところはありますが、しっかりとこれからも警察官としての任務を遂行していきたいと思っているので、皆さんも頑張ってください。特に、女性の警察官が必要です。同期には吹奏楽部などの文化系の部活経験者もいます。警察の仕事に少しでも興味がある人は、ぜひ受験してみてください。
荒川:本日はありがとうございました。