政経学部NEWS
法律系ゼミ合同で最高裁判所での裁判傍聴を行いました
2023.07.04(火)
ゼミNEWS
政経学部の法律系のゼミ合同で、2023年6月16日に最高裁判所で行われた法廷弁論の傍聴へ出かけました。今回は、他の授業との兼ね合いもあるため有志を募りました。大塚雄祐先生(刑法)、小竹聡先生(憲法・ジェンダー法)、長友昭先生(民法・不動産法)のゼミから、計20名ほどの学生が参加しました。
社会的にも注目度の高い裁判ということで、40名の一般傍聴席に81名の傍聴希望者が集まったため、残念ながら抽選に漏れて傍聴できない学生もいましたが、傍聴できた学生から話を聞くなどして、裁判への理解を深めることができました。そこで、法廷で傍聴できた学生から、学生の視点でのレポートを寄せてもらいました。
傍聴日時:令和5年6月16日金曜日 15時〜15時15分
裁判所名・法定番号:最高裁判所・第285号 第三小法廷
事件名:行政措置要求判定取消、国家賠償
〈事件の概要〉
上告人は、生物学的な性別は男性であり、性同一障害である旨の医師の診断を受けている一般職の国家公務員であるところ、職場において、その執務室がある庁舎のうち執務室がある階とその上下の階の女性トイレの使用を認めず、それ以外の階(2階以上離れたトイレ)の女性トイレの使用を認める旨の処遇を受けていた。
本件は、上告人が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場の女性トイレを自由に使用させることを含め、原則として女性職員と同等の処遇を行うこと等を内容とする行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定(本件判定)を受けたことから、被上告人である国を相手に、本件判定の取消し等を求める事案である。
原判決(東京高裁)は、職場のトイレの使用に係る行政措置の要求に関する部分を含め、本件判定は違法であるということはできないとして、その取消要求を棄却すべきものとした。
〈争点〉
本件判定のうち、職場の女性トイレの使用に係る行政措置の要求に関する部分が違法なものであるか否かである。
〈口頭弁論の要旨〉
上告人側:原判決は「濫用はない」と述べて人事院の判断を是認しただけである。
他の職員に性同一障害であることを説明し、理解を得なければ女性トイレの使用を認めないとする経済産業省の方針はプライバシーの侵害であり、女性として社会活動をする上告人の尊厳を傷つけるなど重要な法的利益が制圧されているといえ、社会通念に照らし、著しく妥当性を欠いている。
今までにトイレのトラブルは起きておらず、民間の企業では6社が同様の例で実際にトイレの使用を認めている。また、経済産業省の他の女性職員への調査で、「(女性トイレ使用に)抵抗がある」と答えた職員が2名いたとされていたが、「(女性トイレ使用に)違和感はなかった」とも回答をしており、これは重大な瑕疵である。
人事院の調査はきちんと行われておらず、また裁量を逸脱している。
被上告人:国家公務員法87条は、抽象的且つ概括的な定めであり、広範な裁量が経済産業省に委ねられている。
女性職員の反対意見も一定数あった為、可能な範囲で(上告人の)支援をするとともに他の職員にも配慮をすべく、2階以上離れた女性トイレの使用を認める方針は面談や説明会を重ねて決定したことである。異動先での女性トイレ使用についても他の職員全員の理解を得るために説明会が開かれた。
また、当時はトランスジェンダーに対して、性自認の性別での自由なトイレ使用には社会的な広い理解もなく、法令や他国の措置も考慮すると、本件判定は著しく不適切ではない。
〈判決〉
判決は令和5年7月11日火曜日(15時開廷)に言い渡される予定である。
〈参考条文〉
国家公務員法
86条 職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる。
87条 前条に規定する要求のあつた時は、人事院は、必要と認める調査、口頭審理その他の事実審査を行い、一般国民及び関係者に公平なように、且つ、職員の能率を発揮し、及び増進する見地において、事案を判定しなければならない。
社会的にも注目度の高い裁判ということで、40名の一般傍聴席に81名の傍聴希望者が集まったため、残念ながら抽選に漏れて傍聴できない学生もいましたが、傍聴できた学生から話を聞くなどして、裁判への理解を深めることができました。そこで、法廷で傍聴できた学生から、学生の視点でのレポートを寄せてもらいました。
「行政措置要求判定取消等請求事件」傍聴レポート
新井萌心(長ゼミ/法律政治学科3年/東京都・跡見学園高等学校出身)
傍聴日時:令和5年6月16日金曜日 15時〜15時15分
裁判所名・法定番号:最高裁判所・第285号 第三小法廷
事件名:行政措置要求判定取消、国家賠償
〈事件の概要〉
上告人は、生物学的な性別は男性であり、性同一障害である旨の医師の診断を受けている一般職の国家公務員であるところ、職場において、その執務室がある庁舎のうち執務室がある階とその上下の階の女性トイレの使用を認めず、それ以外の階(2階以上離れたトイレ)の女性トイレの使用を認める旨の処遇を受けていた。
本件は、上告人が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場の女性トイレを自由に使用させることを含め、原則として女性職員と同等の処遇を行うこと等を内容とする行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定(本件判定)を受けたことから、被上告人である国を相手に、本件判定の取消し等を求める事案である。
原判決(東京高裁)は、職場のトイレの使用に係る行政措置の要求に関する部分を含め、本件判定は違法であるということはできないとして、その取消要求を棄却すべきものとした。
〈争点〉
本件判定のうち、職場の女性トイレの使用に係る行政措置の要求に関する部分が違法なものであるか否かである。
〈口頭弁論の要旨〉
上告人側:原判決は「濫用はない」と述べて人事院の判断を是認しただけである。
他の職員に性同一障害であることを説明し、理解を得なければ女性トイレの使用を認めないとする経済産業省の方針はプライバシーの侵害であり、女性として社会活動をする上告人の尊厳を傷つけるなど重要な法的利益が制圧されているといえ、社会通念に照らし、著しく妥当性を欠いている。
今までにトイレのトラブルは起きておらず、民間の企業では6社が同様の例で実際にトイレの使用を認めている。また、経済産業省の他の女性職員への調査で、「(女性トイレ使用に)抵抗がある」と答えた職員が2名いたとされていたが、「(女性トイレ使用に)違和感はなかった」とも回答をしており、これは重大な瑕疵である。
人事院の調査はきちんと行われておらず、また裁量を逸脱している。
被上告人:国家公務員法87条は、抽象的且つ概括的な定めであり、広範な裁量が経済産業省に委ねられている。
女性職員の反対意見も一定数あった為、可能な範囲で(上告人の)支援をするとともに他の職員にも配慮をすべく、2階以上離れた女性トイレの使用を認める方針は面談や説明会を重ねて決定したことである。異動先での女性トイレ使用についても他の職員全員の理解を得るために説明会が開かれた。
また、当時はトランスジェンダーに対して、性自認の性別での自由なトイレ使用には社会的な広い理解もなく、法令や他国の措置も考慮すると、本件判定は著しく不適切ではない。
〈判決〉
判決は令和5年7月11日火曜日(15時開廷)に言い渡される予定である。
〈参考条文〉
国家公務員法
86条 職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる。
87条 前条に規定する要求のあつた時は、人事院は、必要と認める調査、口頭審理その他の事実審査を行い、一般国民及び関係者に公平なように、且つ、職員の能率を発揮し、及び増進する見地において、事案を判定しなければならない。
学生の声
富岡若葉(大塚ゼミ/法律政治学科2年/埼玉県立深谷商業高等学校出身)
今回、初めて最高裁の傍聴席抽選をしました。残念ながら抽選落ちしてしまいましたが、最高裁の傍聴の参加や抽選方法など学ぶことがありました。最高裁判所は、大きな四角い石が積み重なった建物で、外から見ただけでも圧倒的な存在感を保ち、冷たさのようなものが感じられ、緊張感が漂っていました。そのような神聖な建物内で、どのような裁判が行われるのか、実際に自分の目で確認したいと強く感じました。小嶋月菜(長ゼミ/法律政治学科2年/神奈川県立座間高等学校出身)
現在話題になっている事件の裁判を、最高裁判所という滅多に行けない場所で傍聴してきました。傍聴にいらっしゃっていた弁護士の方のご意見も伺うことができ、大変貴重な経験をすることができました。最高裁判所の南門で傍聴希望者の列に並ぶ各ゼミの学生