政経学部NEWS
浅野ゼミナール 早稲田大学との合同ゼミ論発表会
2019.01.07(月)
ゼミ

2012年以来続いている合同ゼミ論発表会も今年で7回目を迎えました。田中愛治教授は今年の11月から早稲田大学の総長に就任されたため、7年間続いた合同ゼミ論発表会は、今年で最後、有終の美を飾るにふさわしいレベルが高く充実した内容でした。

各論文のタイトル、発表者、論文の概要は以下の通りです。
拓殖大学
タイトル:「2018年自民党総裁選の研究~有権者の政治的志向と投票」
発表者:吉田翔(政経学部経済学科4年)

【論文の概要】
本論は、2018年の自民党総裁選に出馬した石破氏と安部氏が得た都道府県別党員票の分散を「安倍政権への支持」という観点から実証分析したものである。本論の仮説は次の三つである。①政権が推し進める政策への反対度が高いと安倍氏支持の党員票の得票率が低い
②財政力指数が高い都道府県は安倍氏支持の党員票得票率が多い
③安部政権下で大臣を輩出している都道府県では安倍氏支持の党員票得票率が多い
政策への反対度は、朝日新聞・東京大学谷口研究室合同調査が2017年衆議院選挙に際して行った「各候補者の政権政策に対する考え」のアンケート調査を使って各都道府県の自民候補者の反対度を平均化して作成している。本論では「少なくとも2018年自民党総裁選で有権者(党員・党友)は候補者(安倍首相)の政治的なスタンスを鑑みて投票している」ということが確認された。今後の課題として、自民党代議士の所属派閥を考慮することがフロアーから指摘された。
タイトル:「女性議員と共働き率の関係」
発表者: 吉川有沙(拓殖大学政経学部法律政治学科3年)

【論文の概要】
昨今、女性の社会進出が増え、出産後も退職せず働く女性が増え、政界でも女性議員が注目され始めている。以上の現状を踏まえ、本論では衆議院に占める「女性議員が多い都道府県ほど共働き率が高い」という仮説を立て、女性議員率と共働き率の関係を検証している。著者の当初の想定に反して、都道府県別の「女性議員率」と「共働き率」の間には負の相関があるという結論を得た。当初の想定に反して正の相関が得られなかった理由として、二つの理由を想定できる。第一に、女性議員の雇用や労働政策優先順位がまだまだ低いということ、第二に、そもそも女性議員の数が少なすぎて、政策にまで影響を及ぼしていないという可能性である。タイトル:「2016年参議院議員選挙における美顔度と得票率の関係」
発表者: 菅原晟也(政経学部経済学科3年)

【論文の概要】
本論は、選挙における候補者の容姿(イケメン度や美人度)が選挙結果に影響を与えるかどうかという問題を、2016年に実際された参院選挙データと、ゼミ生へのアンケート調査データを使って検証している。参議院候補者の「美顔度」は朝日新聞に公開された立候補者の顔写真を使ってゼミ生に五段階(-2から+2まで)で評価してもらうことで著者が独自に作成した。本論では、47都道府県を選挙単位とする「選挙区」では当選回数が4回以上の候補者であれば、当選回数が増える程、美顔度がより得票と関連しているという結果得られた。また「比例区」では新人の候補者と30歳から51歳の候補者の美顔度が得票に影響を与えているという結果が得られた。しかし、候補者の容姿の評価は主観性が高く再現可能性に乏しいという課題が残る。早稲田大学
タイトル:「興行収入に影響を与える要因分析 〜邦画〜」
発表者:岡 采音(早大政治学科3年) 中里見 徹(早大政治学科3年)
村山 冴(早大政治学科3年) 松尾 梨沙(早大国際政治経済学科3年)
【論文の概要】
本論では、映画がヒットする要因を分析している。分析対象は、2014年~2017年の邦画の各年上位40作品(興収10億円以上)で、①原作の有無、②配給会社、③同一の監督で興行収入10億円以上の作品数、③シリーズ作品、④Twitterアカウントの有無、⑤前作興行収入、⑥原作発行部数と興行収入との関係を分析している。分析の結果、配給会社が東宝であることとシリーズ作品であることが興行収入に正の影響を与え、小説原作だと興行収入に負の影響を与えることがわかった。また、シリーズ作品は、前作の興行収入が高いと次の興行収入に正の影響を与え、漫画原作の映画は原作の発行部数が多いと興行収入が高いことがわかった。

タイトル:「都道府県ごとの投票率の差異に関する実証分析」
発表者:古田 捷(早大政治学科3年) 吉水 隆太郎(早大政治学科3年)
横道 弘吉(早大国際政治経済学科3年)
【論文の概要】
本論は、衆議院議員選挙の都道府県別投票率データ(第41回~48回)を使って、なぜ都道府県別に投票率にばらつきが見られるのかというパズルを、若年人口率・立候補者数・都市化度、投票所の面積、惜敗率という観点から分析し、次の結果を得た。①著者らの予想に反して「若年人口率」と「投票率」には正の相関がある。
②「選挙区の候補者数」と「投票率」には負の相関がある。
③「都市化度」と「投票率」には負の相関がある。
④「前回選挙の惜敗率」と「今回選挙の投票率」には正の相関がある。
⑤「投票所当たりの面積」と「投票率」には正の相関がある。
今後の課題としては、一般的常識に反して、なぜ「若年人口率」が増えると投票率が上がるのかというパズルを解くことである。

タイトル:「日本の相対的貧困率拡大の要因分析」
発表者:大森 祐輝(早大政治学科3年) 小川 諒子(早大政治学科3年)
佐竹 花菜(早大政治学科3年) 田島 佑樹(早大政治学科3年)
【論文の概要】
日本では、1人当たりの社会保障費の負担は年々上昇しているにも関わらず、相対的貧困率は停滞もしくは上昇している。我が国の歳出の3割程度は社会保障に使用されており、その社会保障費の8割程度が医療・年金・介護といった高齢者向けの社会保障に使用されている。本論では、現役世代向けの社会保障を多く支出し、経済状況・雇用状況・働きやすさを向上させれば、相対的貧困率が下がるではないかという仮説を立て計量分析している。その結果、社会保障費ベースの分析では1人当たりの社会保障費負担が1000円増加すると、相対的貧困率が10%上昇すること、児童・家族関係給付金の社会保障費に対する割合が10%あがれば、相対的貧困が0.069%下がることが分かった。政策ベースの分析では、実質国内総生産が1増加すれば相対的貧困率が上昇し、幼稚園数・保育所が50軒増えれば相対的貧困率が0.05%減少することが分かった。また、有給取得率の相対的貧困率に対する影響は観察されなかった。
今後の課題としては、国民全体の相対的貧困率に絞ったため、母子家庭のみの貧困率等を検討することである。




浅野ゼミ生から寄せられたコメント
文責:政経学部法律政治学科 2年堀井颯人
政経学部法律政治学科3年 大川 優斗
合同ゼミに参加するのは今回で二回目ですが、昨年と比べると、学生の分析結果や発表の仕方などが格段にレベルアップしたと感じました。早稲田大学の学生の皆さんからは、私たちが今まで議論しても気付けなかった点を指摘していただいただけでなく、具体的な改善点をコメントしていただきました。普段のゼミで行われている論点とは異なる視点からのアドバイスは、とても有意義なものであったと思います。
この一年間計量分析を学んできたおかげで、昨年の合同ゼミでは理解できなかった専門用語や分析手法が理解できたこととても喜ばしかったです。しかし、質疑応答の場で質問ができなかったのはとても悔しかったので、これからまた一年、さらに知識を蓄え、学びを深めていこうと思います。
政経学部法律政治学科3年 滝瀬友優貴
とても有意義な合同ゼミでした。普段のゼミとは異なり、たくさんの学生の意見、考え方を聞けたことはとても私にとって新鮮なものでした。質疑応答で何度も納得するまで意見を交わす姿がとても印象的でした。今後、実証分析を学ぶにあたり、大変貴重な経験となりました。
政経学部法律政治学科1年 長洲雄大
何かひとつテーマを決めて自分で研究をするのはとても大変なのかなと思いました。それから、根拠をしっかり分析して、聞く側がわかりやすく伝えることは難しいのだろうなと感じました。
政経学部法律政治学科1年 平林真奈
私は初めて合同ゼミに参加させていただきました。先輩方の論文発表は、興味が持てる内容で説明もわかりやすく、計量政治学をまだ学んでいない私でも楽しんで聞くことができました。2年後先輩方のような論文発表をできるよう頑張りたいと思いました。