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2017年12月12日ゼミナール

【政経学部】浅野ゼミナール 早稲田大学との合同ゼミ発表会

2017年11月28日17:00から19:00まで、田中愛治ゼミ(早稲田大学政治経済学部)と浅野ゼミ(拓殖大学政経学部)の合同ゼミ論発表会が開催されました。
 
2012年から互いの大学で交互に開催され、第6回目となる今回は拓殖大学E館6階608号室で行われました。

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第6回合同ゼミ論発表会の記念撮影

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参加者の皆さん
今回は、拓殖大学の二人の四年生と早稲田大学の二つのグループによって4つの論文が発表されました。各論文のタイトル、発表者、論文の概要は次の通りです。

拓殖大学

タイトル:「政治家はスジを通すのか?・・・2017年の衆院選における民進党員の行方」
発表者:関 瞳(法律政治学科4年)

【論文の概要】
2017年の衆院議員総選挙において話題となった小池都知事が率いる「希望の党」と「民進党」の解党に注目し、民進党を離党して希望の党に公認申請している現職の代議士はどんな人なのか、という疑問を解明しようという論文です。民進党には憲法改正に反対する人から賛成する人まで様々なイデオロギーをもつ代議士がいましたが、希望の党に公認申請した現職代議士は、マスコミ等が報じるように「選挙で勝つため」に離党したのか、それとも、憲法改正に関して、それまで主張してきた議員個人のイデオロギーと希望の党の「主張が一致したから」離党したのかということを、ロジスティック回帰分析を使って分析しました。2014年に朝日・東大谷口研究室が代議士を対象に実施した「憲法改正に関する」世論調査と、2014年総選挙における代議士の選挙での強さを表す指標を使って分析した結果、マスコミ等の報道とは異なり、民進党を離党して希望の党に公認申請した代議士は「選挙に弱いから」ではなく、希望の党の主張する憲法改正と自分の主義主張が一致するために公認申請を出している傾向があることが統計的に確認されました。




タイトル:衆院選における「次点候補者」優位の研究
発表者:遠藤勇哉(経済学科4年)
 
【論文の概要】
現職の政治家が選挙に有利であるかどうかという研究はこれまでに多くの蓄積がありますが、惜しくも選挙で落選した「次点候補者」が次の選挙で有利かどうかということを2000年から2014年まで6回の衆議院総選挙データとRegression Discontinuity Design (RDD)という統計手法を使って分析しています。その結果、①ある選挙で現職と次点候補者が接戦であれば、次回の選挙において次点候補者優位が存在すること、②次点候補者は次回の選挙において現職議員よりも3.5ポイント得票率が高くなること、そして③2009年と2012年の政権交代時には接戦時の次点候補者優位は存在しないという三点が明らかになりました。この発表には早稲田大学からも多くの質問が寄せられました。

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発表中の関さん                                     発表中の遠藤さん

早稲田大学

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発表中の岩田さんグループ
タイトル:政治家の主体的なSNS利用と得票率の関係
発表者:
政治経済学部 政治学科 3年 岩田大輝
政治経済学部 政治学科 3年 梅村美祈
政治経済学部 政治学科 3年 川口篤史
政治経済学部 政治学科 3年 川添新也
政治経済学部 国際政治経済学科 3年 田尻祐樹
政治経済学部 政治学科 3年 西川祐美
政治経済学部 国際政治経済学科 3年芳賀真平


【論文の概要】
本論文では、2017年度東京都議会議員選挙において、候補者がTwitter/Facebook/ブログを用いると有利になるかどうかということについて、Stataを用いた重回帰分析を行っています。
以下の3点が明らかになりました。
①候補者のSNS利用があることで得票率が上がること
②投稿数の多寡よりも利用の有無の方が得票率に影響していること。
③特にTwitterの利用が相対得票率に影響している(選挙の結果に直接影響している)こと。

今後の課題として、SNSの性質を考慮し、候補者のみならずSNSの利用者(受信者)側の分析を行うことが指摘されました。質疑応答の場面では、選挙期間中の候補者のプライベートな発言を分析対象とすべきなのか否か、新人議員はSNSを多く活用すると想定して、新人議員に絞って分析してはどうか、などという意見も出ました。

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発表中の稲井さんグループ
タイトル:「投票率に1番影響をもたらす要因は何か?」
発表者:
政治経済学部 政治学科 3年 稲井宏貴
政治経済学部 政治学科 3年 大仲音華
政治経済学部 政治学科 3年 粕谷俊介
政治経済学部 政治学科 3年 金子泰之
政治経済学部 政治学科 3年 橘 興平
政治経済学部 政治学科 3年 原田 愛
                                                                                                         
【論文の概要】
本論文では選挙における投票率に影響を与える要因についてフリーの統計ソフトRを用いた重回帰分析を行っています。従属変数は1960年~2014年までの衆議院選挙における投票率とし、それに影響を与える独立変数は、「主観的経済状況」、「客観的経済状況」、「競争度」、「有効政党数」、「投票方式の制度変化」の5つです。 結果として投票行動に有意な影響を与えた変数は、「投票方式の制度変化」、「主観的経済状況」であり、両方とも負の影響を与えていることが明らかになりました。つまり、投票方式の制度変更によって、投票の情報コストが増大し投票率は低下、また主観的経済状況が良いと判断すると投票率は低下することが分かりました。

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発表についてコメント中の浅野先生(左)と田中先生(右)
私は今回、初めて合同ゼミに参加しましたが、質疑応答で先輩方が何度も納得するまで意見を交わす姿がとても印象的でした。発表された論文の内容に関しては、私の知識不足のためなかなか理解できないところがありましたが、今後、統計学や実証分析を学ぶにあたり、大変貴重な経験となりました。



以下は浅野ゼミ生から寄せられたコメントです。
法律政治学科3年 吉田 翔
合同ゼミは去年ぶり2回目になるのですが、今回も自らにとって実りあるものになったと感じています。まず率直に嬉しかったのは、前回に比べ、発表される論文の輪郭や「この論文は一体何を言いたいのか」という焦点をはっきりとつかめたこと。この一年、計量政治学や統計学を学んできた自分にとって、これは何よりの褒美だと思いますし、大いに今後の学習意欲の刺激になりました。
対する反省点は、質疑応答で質問ができなかったことです。発表を聞いていて具体的な質問が幾つか頭に浮かんだのですが、加えてそこに添える建設的な何かが思い付かず、ついに質問を出来ないまま合同ゼミを終えてしまいました。来年は合同ゼミでも自らの成長が感じられる様、またこれから一年、自分なりに経験を積んで、来年の合同ゼミでは建設的な意見が言えるようにしたいです。
今年度の合同ゼミでは、タイムキーパーや進行役を務めされていただきましたが、役目を滞り無く終える事が出来たのは、田中先生、浅野先生と、浅野ゼミ生、早稲田大学田中ゼミの皆様の御協力のお陰です。この場を借りて御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 
 
経済学科2年 江馬拓海
初めての合同ゼミ参加でしたがとても面白かったです。お互いの大学の高いレベルでの発表を見て、実証分析研究というのがどういうものなのかがよくわかり、改めて計量政治学に興味が湧きました。中でも、拓殖大学政治経済研究所が主催する奨学論文で最優秀賞に選ばれた遠藤さんの論文発表を聞いて、物凄い発見をしたんじゃないかというような興奮を覚えました。
自分はまだ知識不足で分からないところもあったので、これから計量政治学を学んでいって、発表についての議論に参加したり、質の高い論文を発表したりできるように頑張りたいです。
 
(文責:法律政治学科 2年 尾崎千花子)

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